静かなる名辞

pythonとプログラミングのこと


TechAcademy盗用事件 公式発表と深まる疑念

これまでの経緯

 TechAcademyマガジンで、teratailの質問・回答の盗用疑惑があり、前回の記事で取り上げました。

TechAcademyがteratailの質問・回答を盗用していた件 - 静かなる名辞

 私が書いたその記事はTwitterやはてブ経由で拡散して多くの方に見ていただき、TechAcademyマガジンの運営上の問題が多くのインターネットユーザに共有されました。それを受けてか、昨日teratail運営、TechAcademy運営からそれぞれ公式のアナウンスがありました。


弊社運営のオウンドメディアへのご指摘について(2019年3月25日) | キラメックス株式会社

 TechAcademyの一方的な盗用であったことが確認された形です。とはいえ、これですべて腑に落ちたかというと幾つか疑念が残ってしまったので、それについて書いておきます。

teratail運営側の説明

 teratail運営側の説明している内容をまとめると、

  • TechAcademy運営が勝手にやったことである。

 という一点です。また、ユーザの投稿を活用する際は適切な周知を行う(teratail運営承認のもとで今回のように勝手に不当利用されることはないので安心してほしい)としています。

なおteratailがこれまで他メディアに対して、コンテンツ使用に関するライセンス等を行なったことはありません。
今後、仮にユーザー様の投稿を活用した活動を行う場合でも、ユーザー様が認識できる方法で事前にお知らせをいたします。

 よってteratail運営はこの件に関しては100%白であることが確定しました。

 一方、teratail運営は、

  • teratailの保有する権利の侵害に対する、損害賠償請求などを含めた対応
  • 今後はこれ以上追求しないのか

 といった点については明らかにしていません。まだ検討中という可能性もありますし、大きな実害を被った訳ではないこと、運営会社同士には(TechAcademyの受講生の就職を斡旋するといった)ある程度の友好関係があることを考えると、これ以上ことを荒立てるつもりはなく、穏便に済ませるつもりなのかもしれません。まあ、これらに関しては運営会社同士で勝手にやってくれれば良いので、私からとやかく言うことはありません。

 ということで、とりあえず私個人としてはteratailを当分は使い続けるつもりです。運営側に黒い要素がなくて少しだけ安心しました。

TechAcademy運営側の説明

 TechAcademyを運営するキラメックス株式会社は、会社のホームページ上のお知らせで声明を発表しました。

弊社運営のオウンドメディアへのご指摘について(2019年3月25日) | キラメックス株式会社

 基本的に盗用した事実は認めているのですが、読んでみた感想はというと、頷ける部分もあるものの全体としては「んんん?」です。死体蹴りっぽくなっちゃいますが、いちいちツッコミを入れてみます。

『■ご指摘に対する時系列の対応について 』について

 キラメックス株式会社の発表によると、今回の件の「時系列の対応」は以下の通りです。彼らの発表を元に一部要約・編集して掲載します。

・2019年3月20日23時
 はてなブログ「saitouena」にて質問と回答の盗用に関する上記のご指摘が公開される*1
・2019年3月20日23時
 ブログの内容をもとに該当記事の精査を行うため、ご指摘の記事を含めて35件の一時削除を実施
・2019年3月22日9時
 はてなブログ「静かなる名辞」にて質問と回答の盗用に関するご指摘が公開される*2
・2019年3月22日18時
 代表取締役社長を筆頭に調査チームを組成し、過去の記事について精査。問題のある記事を一斉削除。

(以下は元の記述を踏まえて私が付け加えたものです)
・日時不明(22日か25日)
 teratail運営に対して直接伺い謝罪。

・2019年3月25日
 Webサイトに報告*3

 私のブログをきっかけに調査チームを立ち上げたのですか・・・ちなみに3月22日時点では件の記事はせいぜい150PV程度しか集めていません(土日に伸びて現在は累計2500PVほどです)。金曜日中にtwitterで投稿された方はいましたが(ブログ読者の方や私の知り合いが主)、それを察知したとしたら恐るべきエゴサ力とでも言うべきでしょうか。

 ということは置いておいて、この時系列表を見て浮かぶ疑問点は以下の3つです。

  • 2019年3月20日以前にもSNSや匿名掲示板で散発的に話題にされていて、記事削除の対応もsaitouenaさんが取り上げる以前に行われていた。少なくとも数ヶ月前から、一部の記事に問題があることを把握している社員(ないし少なくとも記事を削除する権限のある人間)がいたことになる。それについての説明はなし。
  • 「精査を行うために一時削除」とあるが、もみ消しと捉えられても仕方ないのでは。
  • それでも精査していたとしたら、2019年3月20日にsaitouenaさんが言及してから、22日に私が言及するまで丸一日以上あったのに、何をしていたのか。見れば一発で分かる問題であり、最速で動けば21日に調査チーム結成、当日中に状況把握と記事削除を済ませ、22日にはteratail運営への謝罪と公式発表というスケジュールでやれたはず。

 はっきり言って、21日頃まではもみ消す方向で動いていたけど、(私のブログが中途半端にバズったせいもあって)もみ消しきれないと悟った結果が22日以降の動きなのでは? というのが「時系列の対応」を見て思った率直な感想です。あるいは、権限のある上層部が状況を把握していなかったということかもしれませんが。

 グダグダ書いていて自分でも嫌になってきましたが、こんな感じであげつらっていくつもりです。

『■今回の問題とその原因 』について

 TechAcademy運営側は、以下のように書いています。長いですが全文引用します(読み飛ばしてください)。

■今回の問題とその原因
TechAcademyマガジンでは2018年4月から2018年7月まで、TechAcademyマガジンの読者などからプログラミングを学習する上でぶつかりやすい疑問や質問を集め、それに対して現役エンジニアが回答するコンテンツ「実際のエンジニアが回答するシリーズ」を公開していました。

このコンテンツ制作作業の中で、一部記事では学習者の声から疑問を持ちやすいキーワードを社内編集部が設定し、それに関連した質問案作成を外部ライターに依頼、それを社内の編集チームが確認のうえで、ライターがコンテンツ投稿まで行っていました。また、回答に関しては、現役エンジニアが質問をピックアップし、記事の投稿を行っていました。

そして、この時期公開したコンテンツのなかに、今回問題となりましたteratailの内容がそのまま使用されていた記事がありました。

この問題が起きた原因として、協力を依頼した外部のライター・エンジニアの一部メンバーに著作権などに関する意識が不十分な方がいたこと、外部の方に執筆頂いたTechAcademyマガジンの記事は全て弊社で編集を行なっておりましたが、それらのコンテンツに対する著作権保護に準じた弊社内での記事の流用チェックが十分に機能していなかったことが挙げられます。

 (゜ロ゜)。。。

 5回くらい読み直して、ようやく何を言っているのかおぼろげにわかってきました。わかりやすくイラストで説明します。

 まず、外面的な記事の体裁はこうでした。

外面的な体裁
外面的な体裁

 この通りやっていれば、何ら問題なかったでしょう。でも実際はこうでした。

実際
実際

 ・・・これ現実的ですかね? 質問と回答は独立に作られているということらしいですが。。。

 どちらも同じteratailのページからコピペされているケースも多々あった訳で、単純に一人でぜんぶコピペしたんじゃ? という気がします。まあ、この通りだとしたら、

  • 質問者役コピペライター:「コピペで質問作ったろ!」
  • 回答者役コピペライター:「おっ、この質問teratailからのコピペだ! 回答もコピペしたろ!」

 という素晴らしい共同作業があった訳ですね。

 あと、さらっと流していますが、

一部記事では学習者の声から疑問を持ちやすいキーワードを社内編集部が設定し、それに関連した質問案作成を外部ライターに依頼

 とありますが、そうやって作成した記事を「現役エンジニアが回答」と偽って発表している時点で言い逃れできませんから。それに、実際にTechAcademyに寄せられた質問なんてそもそもあったのでしょうか? 現時点でTechAcademyマガジンのサイトで「現役エンジニアが回答」のようなキーワードで検索をかけてみたら1記事もヒットしなかったので(リンクテキスト等除く)、この形式の記事はすべて削除されてしまった訳です。そもそもすべてが「なんちゃって寄せられた質問」だったのでは? という疑惑があります。

 まあ、どうやって記事を作っていたのかは正直どうでも良いです。それよりこの節の全体に言えますが、TechAcademy側がどこまでコピペに関与したのか、まったく把握していなかったのかある程度はわかっていたのか、どのタイミングで把握してどう動いたのか、等、肝心な部分の説明がぼかされています。文字通り受け取るなら外部の人間が勝手にやって20日~22日に把握したたという主張のようですが、信じがたい点がいくつもあります。そのせいで、納得の行く説明にはなっていない感があります。

 個人的には、本当に外部の人が勝手にやらかしてチェックをすり抜けてしまったのなら、もっとスムーズに対応できたでしょ、という気がしています。数ヶ月前から散発的に話題になっていた訳ですし、運営はそれを把握していた*4でしょうから、その時点で動くべきだった。動けなかったのは、よほど重大な責任が内部にあったのでは? という気しかしません。

『■今後の対策 』について

 キラメックスは以下のように述べています。

他サイトなどからの著作物の流用がないように、下記対策を徹底し、誠意をもって運営に努めて参ります。

1)協業する外部ライター・エンジニアへの情報取り扱いリテラシー教育の徹底
2)運営体制強化のための社内のTechAcademyマガジンの編集者増員
3)情報流用をチェックする第三者事業者提供のツール導入
4)当該の流用を行った外部エンジニア・ライターへの業務依頼の停止

 いや、上でも書いたけど「現役エンジニアが回答」と偽って発表している時点で、単純な著作権侵害の問題ではありませんからね?

 外部に責任を押し付けたいようですが、運営体質そのものを変えないと駄目だと思う。

そもそも論

 この発表は、「キラメックス株式会社のお知らせページ」に掲載すべきものだったのでしょうか?

 はっきり言って、誰が読むんだという感じです。「祭り」に乗っかった人たちに読んでもらえれば良く、できるだけこの事実が広がらないようにしようという魂胆が透けて見えます。同様の声明はTechAcademyのトップページやTechAcademyマガジンには今の所掲載されていません。Facebook, Twitter等のSNSでの発信もなし。

 もちろんteratailのユーザや運営に対する謝罪も大切だとは思いますが、それよりも謝罪しないといけないのは、彼らが裏切ったTechAcademyマガジンの読者、TechAcademyのユーザに対してではないでしょうか。私から言うのはどうなのかという面もありますが、はっきり言ってどうかと思います。

ひどかったので問い合わせる

 ここまで読んでいただいた方には理解していただけたと思いますが、キラメックス株式会社の対応は少なくとも私にとって不満の残るものでした。ということで、以下の文面でキラメックス株式会社に対して問い合わせを行いました。

キラメックス株式会社様

貴社のオウンドメディアに対して、指摘のブログ記事を投稿したはやたかという者です。差し出し元の証明のため、このメールの文面は送信と同時に私のブログにて公開しますので、ご確認ください。
https://www.haya-programming.com/

今回の騒動を受けて、貴社の行った発表(https://www.kiramex.com/news/info/2019/5c98d89a6d027a17770002ea/)を拝見させていただきました。残念ながらこちらの内容は、少なくとも私にとっては不満の残るものでした。この発表を読んだ多くのteratailユーザ、貴社サービス利用者も同じ思いを抱いていると確信しています。よって、以下の問い合わせに応じていただきたく思います。

まず、以下の疑問にお答えください。
・TechAcademyマガジンの盗用疑惑は数ヶ月前からインターネット上で囁かれており、その度に記事削除の対応が行われていた。より早い段階から把握していた社員もいたはずであり、どうしてこれほど対応が遅れたのか。
・そもそも(仮に盗用がなかったとしても)「質問の存在を捏造して掲載する」という行為自体がTechAcademyマガジンのユーザ・読者を裏切る行為である。この点については社内でどれだけの人間が認識していたのか。問題とは思わなかったのか。

また、次のような要望があります。これについてはTechAcademyのサービスに関わる問題なので、ユーザではない私から申し上げるのも恐縮だと思いますが、あえて貴社のユーザを代弁する形で書かせていただきます。
上でも述べましたが、今回の件については、「そもそも実際に寄せられたものではない架空の質問と回答を創作し、実際にTechAcademyに対して寄せられた質問であると偽って掲載し、企業の宣伝等に用いるという行為自体に深刻な倫理的・コンプライアンス的な問題がある」と考えています。貴社の発表では、これについてどう考えているのかが読み取れませんでした。
また、キラメックス株式会社のお知らせページでの公表は、必ずしも多くの貴社サービスのユーザに触れるものではありません。しかし、貴社の行われた行為はそれらのユーザを裏切ったものであり、自社のユーザに対して謝罪する姿勢がなければ、このことを知ったユーザは「TechAcademyは信用できるサービスではない」という印象を抱くでしょう。
よって、以下の2点について要望します。
・まず「架空の質問・回答を『実際に寄せられた』ものとして掲載したこと」について立場をはっきりさせるような声明を出すこと。
・TechAcademyのページやTechAcademyマガジンのページ、SNS等にも声明を出し、今回の件について周知を図るとともに、謝罪する姿勢を示すこと。

何卒よろしくおねがいします。

まとめ

 とりあえず進展はあったけど、まだ腑に落ちないという感じです。私としては、腑に落ちるまでやってくれ、と思います。

 とりあえず以上です。新たな動き等があればこの記事に追記していきます。

続報

 けっきょくもう1記事書きました。

TechAcademyのその後 - 静かなる名辞