静かなる名辞

pythonとプログラミングのこと


TechAcademyがteratailの質問・回答を盗用していた件

編集履歴

2019/03/22 朝

 投稿。その後数回微調整。

2019/03/22 夜

 タイトルと内容を全面的に改稿。

  • 現時点で確証がない部分について表現・内容を修正
  • 情報を追加

2019/03/23 朝

  • 追記

2019/03/25

  • teratailへの問い合わせ結果を掲載

 「ライセンスしていない」とのことです。

  • それに伴ってタイトルおよび内容を調整

2019/03/25 深夜

  • teratail運営とTechAcademy運営からそれぞれ公式のアナウンスがありました。


弊社運営のオウンドメディアへのご指摘について(2019年3月25日) | キラメックス株式会社

 これらを踏まえた続報記事を公開しました。

TechAcademy盗用事件 公式発表と深まる疑念 - 静かなる名辞

 また、この記事の内容は古い情報に準拠しています。いずれ更新していくと思いますが、現時点では手を付けられていません。最新の情報を知りたい方は、続報記事もあわせて御覧ください。

はじめに

 私はteratailというQAサイトで回答をしていて、pythonカテゴリ総合一位だったりします。あちこちのサイトを見ていたら、TechAcademyというプログラミングスクールのマガジンページがteratailの質問と回答を盗用しているかも? という話を見つけました。図々しいと思いながらも情報をまとめておきますので、読者の皆さんはなにかの参考にでも役立ててください。

先人たちのまとめ

 こちらのブログ記事などが概要を掴むのに良いと思います。

techacademyがteratailの質問を転載して記事を作っている - saitouena

 5ちゃんねるのteratailヲチスレでも取り上げられているので(現在進行形)、とりあえずリンクを貼っておきます。

teratailもりあがっtail? 26問目


 要約すると、

  • 「TechAcademyマガジン」というオウンドメディアで、主に「TechAcademyに実際に寄せられた質問に現役エンジニアのメンターが回答しました。」という体裁の記事にteratailからの転載と思われる投稿が多数(少なくとも2桁、下手したらそれ以上)ある。
  • 有志の作成した「転載記事リスト」には特定のメンターの名前(複数人。実名なのかどうか、そもそも実在する人物なのかは不明)が多く上がる。
  • TechAcademy側は「Twitterや匿名掲示板などで取り上げられた」記事を削除して対応中。

 という感じです。

一例

 こんな感じです。この問題が盛り上がり始めた、最初期のツイートで取り上げられたものです。なお、TechAcademyの元記事は消えていたのでWeb魚拓です。

【魚拓】curlコマンドをJavaScriptのAjaxで実行する方法とは【メンターが回答】 | TechAcademyマガジン
jQuery - curlコマンドをjqueryのajaxで実行する方法|teratail

 見ていただければわかる通り、出典として元の質問を示す訳でもなければ(まあ「TechAcademyに寄せられた」という体裁なので示せないのですが)、内容を書き換えて誤魔化すといった小手先の芸もありません。コードはもちろん、質問・回答の文言もほぼそのままコピペです。良識を疑うとかそれ以前に、「なんでこれで問題にならないと思ったの?」というのが率直な感想です。

 こういうのがン十件あり、深刻な事態を伺わせます。

法律上はどうなるのか

 ふと「teratailの規約が緩すぎて法律上何ら問題ない」ということになったら大変だと思い*1、teratailの規約を調べました。

第9条(権利帰属)

3.登録ユーザーは、投稿データについて、当社に対し、世界的、非独占的、無償、サブライセンス可能かつ譲渡可能な使用、複製、編集、改編、掲載、転載、公衆送信、上映、展示、提供、販売、譲渡、貸与、翻訳、翻案、配布などができる権利および二次的著作物に関する現著作権者の権利(著作権法21条ないし28条の権利をいい、商用利用を含む)に関するライセンスを付与します。
利用規約|teratail(テラテイル)

 基本的には健全な内容でした。teratailのユーザはteratailの運営会社に対して諸権利をライセンスしている、という立場です。

 よって、

  • teratail運営がTechAcademy運営に対して、こういう使い方が可能になるライセンスを付与したのであればセーフ
  • それ以外は法的にアウト

 という状況であると考えられます。ユーザがライセンスを付与しているのはteratailの運営会社に対してであって、それに関係ない事例に対しては通常の場合と同じ扱いになるからです。

 なお、こういう使い方をされるのを承知でteratail運営がデータの権利を渡した確率は蓋然的には限りなく0に近いと考えられます。あまりにも酷い使われ方であり、これを承諾したのであればteratail運営の信用問題にも発展しかねません。・・・が、その可能性も皆無ではないため、初稿の時点でこの記事に多くあった「断定的な表現」は後から修正しています(2019/03/22夜時点*2*3)。

 ※この件についてteratailに対して問い合わせを行っていましたが、2019/03/25に返信があり、ライセンスは行っていないとのことでした。

 よって、TechAcademyが合法的(?)にライセンスを得て掲載していた可能性はなくなりました。

 また、「TechAcademyに実際に寄せられた質問に現役エンジニアのメンターが回答しました。」という記載は著作権以外の問題も発生させます。teratailの質問・回答をコピペしてつくったQ&A記事の質問が実際にTechAcademyに寄せられている訳はないので、実態より多くの質問が寄せられている、と誤認させていることになります。これは一種の誇大広告「みたいなもの」でしょう。「こんなに賑わっているプログラミングスクールなら安心して勉強できる」と思って入会する人がいれば詐欺「のようなもの」です。ただ、私に法律関連の知識はないので、これがどの程度深刻なものかは正直なところわかりません。あくまでも参考として書いておきます。

そもそもTechAcademyとは何ぞや

 プログラミングスクールです。「最短○○でエンジニアに!」のような広告などをよく目にすると思います。

 スクールとしての評判は、ググって出てくるページなどを読んでください。実際に自分が体験した訳でもありませんし、これ以上述べることはしません。

 また、ありがちなことですが、この運営会社は営業活動の一貫としてオウンドメディアを運営し、Web記事も発信しています。「スーツを着たイケメンのお兄さんと女子大生風の女の子のアイコンがセリフでしゃべるページ」と言えば、検索で引っかかった記憶がある方も大勢いると思います。

 で、こういう盗用?なんて真似をしている会社はどんなところなのでしょうか? 去年に大炎上した侍エンジニア塾の場合、元中の人によれば「設立が新しく、資本規模も小さい会社」であり、いろいろな杜撰さも同情に値するかどうかは別として「わからんではない」という面がありました。

古巣の侍エンジニア塾(株式会社侍)の炎上について思うこと【2018/10/23追記】 - INODEVLOG

 ということで、運営会社のページです。重要そうなところだけ抜粋しています。

会社名 キラメックス株式会社
事業内容 プログラミング教育事業
設立 2009年2月2日
資本金 4,800万円(資本準備金を含む)
親会社 ユナイテッド株式会社(東京証券取引所マザーズ市場)

運営会社 | TechAcademy [テックアカデミー]

 歴史はそれなり(10年)にあるようです。

 ふーん、マザーズ上場企業が親会社ですか。立派な会社なのかな? と思ってしまいますが、どうやら完全に子会社化されたのは近年のようです。

ユナイテッド株式会社によるキラメックス株式会社の完全子会社化について(2016年2月3日) | キラメックス株式会社

 それ以前に資本関係があったのかどうかまでは調査不足で不明です。とはいえ、問題の記事は子会社化されてから出てきたものが多くを占める訳で、けっきょく「上場企業(の子会社)がこんな杜撰な真似をしている」という構図には変わりはありません。こういうのってコンプラ的に一発アウトだと思うんですが、どうなんでしょうね。

なぜ人は間違えるのか(なんでこんなことになってしまうのか)

 ここまでの説明でも、あまりにも酷い状況なのは皆さんにおわかりいただけたと思うのですが、「どうしてこんなことするの?」という疑問を持った方も大勢おられることでしょう。簡単にですが私が説明できる範囲で大雑把な背景を説明します(正確を心がけますが、憶測も含みます)。

 基本的に、まともな記事を供給する、というのはけっこうお金がかかります。「エンジニア」として食っていける実力のある人が一時間とか二時間かけて記事を書いたら、時給ン千円以上ですから相当なコストになります。ASCII.jpとかならそれでやっているかもしれませんが(まあ彼らも彼らで厳しいだろうけど)、ほとんどのところはコストを捻出できないでしょう。更に、オウンドメディアの場合は「安いコストで宣伝に寄与してくれればいい」程度に思われていて、それほど予算を割かれていないといった状況が容易に想像できます。

 なので、多くのIT系オウンドメディアは給料の安い自社社員(当然専門的な技術力はない)に書かせるか、クラウドソーシングなどで安く書いてくれる人を探して書かせるか、インターンにやらせるか、といった運営方法を取っていると思います。結果、qiitaの殴り書きよりひどいクオリティのオウンドメディア記事が量産されてしまう訳です。

 では、今回の件は、TechAcademyがクラウドソーシングとかで雇った人が暴走しちゃった?

 その可能性はほぼない、と個人的には考えます。普通、ライターにそこまでの裁量権はないからです。ああいう記事をライターの方が作ってしまうとしたら、「teratailの質問をTechAcademyに寄せられた質問として転載してほしい」という依頼を受けた、というケース以外まったく考えられません。

 頼まれもしないのにこっそりやってバレたら、次の仕事はなくなります。ヘタしたら「企業イメージを損なった」って訴えられかねない。

 だって、確実に真っ黒で法律違反な行為ですよ? ライターの裁量でできる訳がない。

 また、「インターネットで囁かれ始めてからの対応が『記事の削除』だった」という話もあり、限りなくTechAcademy本体*4が黒と言う他ありません。

 ではどの辺まで黒いか? 以下はすべて憶測になりますが、常識的な遵法意識とリスク感覚を持つ(であろう)上位の経営陣が最初からすべて把握していた、というのは考えづらい状況です。どちらかといえば、担当者数名くらいが暴走してこうなったような気がします、というかそれくらいが自然に思えます。

 いずれにせよまともな会社のやることとしては悪質すぎるし、企業イメージへの悪影響も大きいので、上の憶測が正しい場合、もしこれ以上オオゴトになれば担当者は誰かしら処分されるんじゃない? と見ています。あーあ、、、、

他にもがばいよ!

 さすがに盗用と比べると霞んで見えますが、クオリティは低いです。

ソースコード

n = 1
 n+=1
 print (n)

https://techacademy.jp/magazine/18190

 そのままコピペしました。きっと真似して書いた人は「IndentationError: unexpected indent」に悩まされるでしょう。

 推して知るべし・・・

今後の展開

  • とりあえずTechAcademyは事実関係を認めて謝罪した方が良いと思います。ライセンスの件についてはイマイチはっきりしませんが、アクセスしたユーザに嘘をついた(teratailのコピペをTechAcademyに寄せられた質問と回答として紹介した)ことは事実です。「なかったこと」にするには遅すぎます(最初から遅すぎるのだが)。逆に、本格的に炎上する前に傷を閉じられれば、相対的に浅く済む可能性もあります。
  • teratail運営はできれば早急にこの件についての立場を示すべき。「ああいう使い方をされるのを承知で売っていた疑惑」が少しでも残っている限り、ちょっと安心して使い続けることができません。

 →2019/03/25に問い合わせの結果が来て、「ライセンスしていない」とのことでした。今後の対応は協議中とのことです。
 詳細は記事末尾の追記を御覧ください。

 以下の2つは、権利の不当な侵害があったとした場合ですが、

  • 権利侵害の不当利益返還請求とかは、個人で考える気には正直なれません。理論的にはできるだろうけど、手間に見合った額が取れるかと言うととても微妙な気しかしない。そもそもteratailの投稿で投稿者が直接経済的な利益を得ている訳ではなく、ユーザから不当利益返還請求は難しいのでは? という考えに傾いています。teratail運営はTechAcademyの記事にPVが流れた分の損失を被っているので、できるかもしれないけど。
  • teratailの運営は、不当に権利を侵害されたのであればなんか言ってみるのはありだと思います。ただ、teratailの運営会社のレバレジーズ(本業は人材アウトソーシングや転職支援などです)と、TechAcademy側にはそれなりの取引関係があることを考慮すると、最終的に「穏便に済ませる」といった判断に落ち着くのではないでしょうか。さすがに「今後も野放し」というのは、一teratailユーザとしては支持できないところなので、ほどほどの落とし所を探ってほしいのですが。

 おまけ。

  • この記事のアクセスが伸びる(伸びて)

今後の予防策

 プログラミングスクールや、オウンドメディア系のIT記事などが世間を騒がせた事例は去年幾つかありました。

侍エンジニア塾とAidemyの杜撰さから学ぶべきこと - Qiita

 さすがにここまで続くと構造的な問題があるとしか言えません。予防策を書きます。

 とりあえず一般ユーザーに対しては、以下くらいしか言えることがありません。

  • オウンドメディア系記事は検索で出てきても信用しない。はっきり言ってクオリティの平均値は個人のブログ以下ですし、オウンドメディアによくある初心者向け的な内容であれば、書籍やチュートリアルを読んだ方がわかりやすくて正確な知識がつきます。
  • プログラミングスクールは・・・まあ、どうしても必要なら評判とか見て選んでください。オンライン学習なら書籍+progateとかやっすいサービスでも(優秀な人は)できると思うので、そういうのを検討するのもありです。また、オンラインスクール系よりは昔ながらの「専門学校」などの方が安定はしているでしょう。

 IT企業などの経営者の方が読んでいたらとしたら、私から伝えたいことは

  • 半端な気持ちで自社メディア、あるいは教育事業を運営できると思うな

 の一言ですね。まともにやるなら、相当のコストを覚悟してください。それで運営して黒字にならないなら、やるべきではないと思います。

 また、すでにそういう自社メディア、事業を抱えてしまっている企業の方がもしいたら、

  • いますぐ相当のコストを投入して、品質に問題がないかチェックし、問題があれば修正する

 のがおすすめです。潜在的な破壊力はすでに証明されていますから、もはや時限爆弾みたいなものです。炎上するまで放置するより、先になんとか処理した方が賢明だと思います。

まとめ

 とにかくひどい。そういう感想しかありません。なんかあれこれ論評するまでもない。

 とりあえず、関係者の皆さんには「まともに」対処してほしいところですね。

2019/03/23 追記

 現時点では、これに関係する記事がほとんど削除されているようです。このまま幕引きを図るつもりだと思われます。

 今後の動向をチェックし続け、何かあれば編集します。また、この件についてteratailの運営にも問い合わせているので、そちらの進展もいずれご報告します。

2019/03/25 追記

 teratail運営への問い合わせで返信が得られたので、許可を得てこちらに掲載します。

 要約を先に書いておくと、

  • teratailからのライセンスは行っていない
  • 今後の対応は協議中

 とのことです。

 私が問い合わせた内容。

送信日時: 2019/03/22 20:09:52
タイトル: TechAcademyに投稿されたteratailの投稿と酷似した記事について
本文 :
お世話になっています。表題の件について伺いたいことがあります。
TechAcademyというサービスのオウンドメディア上において、teratailの質問・回答と酷似した内容が投稿されているということがインターネット上で話題になっております。
この件について以下の点について確認したいと思います。
1. これはレバレジーズが正式に権利をライセンスしたものか
2.a. 1.について、そうであれば、妥当なものと判断し、今後対応も行わないというこか
2.b. 1.について、そうでなければ、現時点で今後の対応は検討しているか
(2.aと2.bは当てはまる方だけ回答していただければ構いません)
3. 利用規約第9条(権利帰属)から、ライセンスされたものであれば各ユーザはTechAcademyの運営会社について関連する権利を主張できない反面、そうでなければ原理的には通常通り権利侵害を申し立てられると理解しているが、それで正しいか

また、このメールと返信の公開の可否についてもお伺いしたいと思います。
お忙しいとは思いますが、何卒よろしくおねがいします。

 返信。

いつもご利用ありがとうございます。teratailサポートチームです。

この度は、お問い合わせありがとうございます。

お問い合わせいただいた件について、teratail側から記事使用のライセンス等は行っておりません。
teratailがユーザー様の投稿を活用した活動を行う場合は、ユーザー様が認識できる方法でお知らせをさせていただきます。

今後の対応については、現在協議中です。
ユーザー様に安心してご利用いただけるサービス運営に努力してまいります。

こちらの返信内容については、そのまま公開していただいて差し支えありません。

今後もteratailをよろしくお願いいたします。

 何はともあれ、teratailからライセンスはしていないとのことで、ほっとしました。

 今後は、

  • teratail運営の(公式発表、TechAcademy側への措置などを含めた)対応
  • TechAcademy側の対応

 に注目が集まりそうです。

2019/03/26 追記

 25日の夜に動きがありました。

 以降は続報記事で扱います。

TechAcademy盗用事件 公式発表と深まる疑念 - 静かなる名辞

2019/04/15 続報

 その後動きはほとんどなかったのですが、続報とまとめです。

TechAcademyのその後 - 静かなる名辞

*1:私がteratailを使い続けるかどうかも考え直さないといけなくなります

*2:なお、それまでにこの記事が集めたPVは本ブログの一日の総PVの1割未満であり、集めたはてブやtwitterのシェアも片手で数えられる程度で、現時点で世間にさほど大きな影響を及ぼしてはいないことを付記しておきます

*3:また、この件については私からteratail運営に問い合わせを行っています。結果が返ってくれば追記しますが、あまり期待しないでください

*4:あるいはメディア運営をまるごと別会社に委託しているとか、そういう可能性もあるかもしれませんが、考慮しません